
U-VOICE インタビュー Vol.20 – SANKARA33 鉢呂史慧・菅原真希
『ジビエ』とは、狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味するフランス語で、ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化です。古くから狩猟肉を食べる文化があったここ日本でも近年ジビエが脚光を浴び静かなブームとなっています。その理由として、農作物や家畜に多大な被害を及ぼす鳥獣を駆除した際に廃棄により命を無駄にするのではなく、食材として有効活用しようという動きが強まったこと。そして山野を駆け巡り大空を舞った天然の肉は、食用に育てられた畜産肉と比べて高たんぱく・鉄分豊富などの優れた栄養価でありながら、低脂質であることで健康や美容に高い関心を持つ人たちから支持されていることなどが、新たなブームの要因となっていると言われています。またペットの肥満が問題となっている近年では犬・猫用にペットフードとしても用いられ、農林水産省の調査によるとペットフードとしてのジビエの利用は2016年度の150トンから、21年度は4倍超の656トンに急増し、ジビエ全体に占める割合も11.7%から30.8%に増加しています。
U-BASE CAMP、U-BASE海老名が構えるウエインズパーク海老名では、ゴールデンウィークの5月3日・4日の2日間、町田市をベースにジビエのペットフードをプロデュースをする『SANKARA33(サンカラ サンジュウサン)』のPOP UPイベントを開催します。
20回目となる今回のU-VOICEでは、今注目のジビエを使用し無添加にこだわるペットフードのクラフトブランド『SANKARA33』のおふたりをお招きしてお話を伺いました。

― まずはじめに、自己紹介をお願いします。
はじめまして。SANKARA33代表取締役の鉢呂史慧と、菅原真希です。私たちは中学の同級生であり、現在はともに狩猟も行うハンターとしても活動しています。現代の暮らしの中では、”狩猟”と聞いてもなかなかイメージが湧かないかもしれません。令和5年度の農林水産省の調査によると野生の動物によって農作物が受ける被害は、なんと年間164億円にも及びます。一方で、日本の食料自給率はたった38%とかなり低くて、毎年5,000ヘクタールもの森林が被害を受けています。そして有害鳥獣として駆除された鹿のうち、約8割が一般廃棄物として処分されているという現実があります。私たちは狩猟と『SANKARA33』の活動で、人間社会の都合で”害獣”として命を奪われていく動物たちの命をただ廃棄するのではなく、向き合い、循環させ、未来へつなぐ。それが自分たちにできるひとつの役割だと感じて活動しています。
― 『SANKARA33』ってとても印象的な名前ですね。どのような意味があるんでしょうか?
『SANKARA』は、サンスクリット語で“天からの恵み”という意味です。私たちは、地球にある資源はすべて天から与えられたものだと考えていて、その恩恵を受けて私たちは命を紡いでいる — そんな想いから名付けました。そして”33”という数字は、私たちふたりに共通する数秘術の番号です。その使命は“愛”であるといわれています。家族への愛、動物への愛、地球への愛……この世界は、さまざまな“愛”で成り立っていると感じている私たちにとって、「33」は活動の象徴でもあります。愛犬・愛猫、そして飼い主の皆さまに“愛”を届けたい、それが『SANKARA33』に込められた想いです。

― ブランドを始めるきっかけになった出来事があれば教えてください。
初めて狩猟を見学に行ったとき、たくさんの学びがありました。私たちが行っている『巻狩り』は猟場を四方から囲んで猟犬を使い、獲物を追い込む狩猟方法です。仕留めた鹿や猪は50~80kgにもなりますが、自分たちの手で山から下ろし解体します。それまでは、お肉がどうやって自分の口に届いているのかを実感する機会はありませんでした。でも実際に目の前で解体し、通常は捨てられてしまう骨や内臓も丁寧に扱う先輩たちの姿に、強く心を打たれました。また猟犬たちは、狩猟で得た鹿や猪の肉や骨を食べて育っています。その毛並みや体つきはとても美しくて無駄がないんです。犬の祖先は狼であり、本来は肉食動物。そうした本来の食性に立ち返ることで、健康が保たれていると感じました。同時に先ほど申し上げたとおり、有害駆除された鹿の8割が廃棄されている現実を知って、「命を無駄にせず活かしたい」と強く思うようになってSANKARA33を立ち上げました。
― 『SANKARA33』のペットフードで、ジビエや無添加にこだわっている理由を改めて教えてください。
私たちは「食べたもので身体はつくられる」、そして「食べることは生きること」だと考えています。今は気軽に美味しい食事やおやつを手に入れられますが、そのすべてが身体のためになっているとは限りません。市販のペットフードには、添加物が多く含まれていることが一般的です。もちろんすべての添加物が悪いわけではなく、劣化を防ぐために必要なものもあります。ただ中には体に不要なものも含まれていますし、それが体内に蓄積してしまうこともあります。さらに原材料となる肉自体にも、成長ホルモン剤や抗生物質、殺虫剤などが使われているケースも少なくありません。一方、山で生きているジビエたちは、薬品とは無縁の世界で育ちます。鹿は草や木の葉を食べ、猪はどんぐりや栗、ミミズなどを食べて生きている。最近は犬の癌も増加していますが、その一因として食生活が関係しているともいわれています。大切な家族である愛犬と過ごせる時間には限りがあります。だからこそできるだけ自然に近く、愛と栄養がつまったごはんを届けたい。私たちはそんな想いで”ジビエ×無添加”にこだわっています。

― お肉の扱いで、特に気をつけていることはありますか?
ジビエは栄養価が高い分、寄生虫や細菌などのリスクもあることがわかっています。だからこそ、私たちは衛生面を何より大切にしています。獲物を捕獲したあとはなるべく早く解体し、手袋着用、殺菌済みの道具を使用、着弾部位は使いません。また解体後はすぐに冷蔵保存。長期保存の場合は、業務用冷凍庫で−20℃以下に管理しています。ジャーキーの加工については80℃で12時間加熱し、寄生虫や細菌をしっかり死滅させています。さらに定期的に第三者機関で検査も行いその結果を、ホームページで公開することで安心して手にとっていただけるよう心がけています。

― アウトドア好きの読者も多いので…おすすめのキャンプスタイルがあればぜひ教えてください。
おすすめは”何もしないキャンプ”です(笑)。最低限の設営と食事の準備を終えたら、あとは自然の中に身をゆだねて過ごします。山から吹く風、葉の音、土の香り、夜空の星...、日常から解放されて五感で自然を感じきる時間が一番の贅沢です。焚き火を囲んで大切な人とお酒を酌み交わして心の交流をする。自然と大切な人達からエネルギーを得ることが、次の日からの活力になります。

― 5月3日(土)4日(日)に行われるウエインズパーク海老名でのPOP UPは、どんな想いで参加されますか?
ウエインズパーク海老名に初めて訪れたとき、本当に感激しました。まず何より、施設全体がハイセンスで圧倒されるほど素敵な空間。そしてそこで過ごすお客様たち――大人も子供も、そしてわんちゃんまでもが、その場の時間を心から楽しんでいる様子が伝わってきました。ただ明るくにぎわう場所というだけでなく、それ以上にワクワクする体験や新しい発見を提供する姿勢に、私たちSANKARA33もとても刺激を受けました。“愛”というテーマを、私たちはどうやってお客様に届けるか? 業種は違えど、私たちにとっても大きな学びでありこれからの課題のひとつとなりました。何の実績もない私たちの挑戦を温かく応援していただけたことに、心から感謝しています。当日のPOPUPでは私たちらしさを全開でお届けできるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします!

― それでは最後に、SANKARA33としてこれからどんなことに挑戦していきたいですか?
SANKARA33を立ち上げる時から「自分たちが社会に何ができるか」を考えて、今はビーチクリーン活動と保護犬関連の寄付も行っています。そんな取り組みを通して日々感じるのは、人は支え合いながら生きているということ、そして自然や動物から受けている恩恵がいかに大きいかということです。そして今後の目標としては、アニマルセラピーにも関心があるので保護犬団体へ鹿肉のおやつを寄付しながら、保護犬と児童施設の子供たちをつなぐ機会を作りたいと考えています。子供たちとわんちゃんが交流してお互いに癒し合えるような時間を生み出すことで、笑顔が広がっていけば嬉しいです。同じように老人ホームへの訪問活動も視野に入れています。さらに、鹿や猪の革を使ったジビエレザーのワークショップも構想中です。命の循環を、モノづくりを通して実感していただけたらと思っています。
― 今後のご活動も楽しみにしています!今回は貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。
【プロフィール】
SANKARA33
狩猟から加工まですべて自らの手で行い、二次流通品を一切使用せず、無添加・高栄養価のペットフードをお届けしているクラフトブランドです。
公式ホームページ:SANKARA33
公式インスタグラム:@SANKARA33
